お前の落とした斧は『金の斧』ではない。『銅の斧』だ
お前は何故嘘をついた?
私はその『金の斧』を見た時、とても欲しくなりました
自分の『金の斧』が欲しいという気持ちに、嘘をつく事は出来ませんでした
ほう
お前は自分に正直だったというわけか
よし
褒美として金、銀、銅全ての斧をお前にくれてやろう
有難き幸せな事で。
ただ・・・
ただ?何だ?
その『銅の斧』は錆びつきぼろぼろで使い物になりません
貴方様の方で引き取ってもらえればと・・・
どこまでも正直な奴だな
『銅の斧』のかわりに、もう一本『金の斧』をくれてやろう
身体の成長
エテが養護学校を休み始めて、小6年間+中1 今年で7年目になるのか
小さかったエテも40センチ程背が伸びた
声変わりも始まり、可愛い声もそろそろ終わる
まだつるつるの顔だけど、そのうち髭も生えてくるのか・・
学校に行く、行かないにかかわらず確実に身体は成長している
同じ年の子供達と接触する事がほとんどないので、比べる事は出来ない
が、はっきり言える事は力では敵わなくなってきているという事
物の取り合いになった時に、負けてしまう・・・
彼は気付いているのだろうか
自分が母より大きくなった事を。
物の取り合いで、母に奪われる事がなくなってきた事を。
車の走る道路に急に飛び出そうとした時、力尽くで引き留める事は出来るのか?
不安だ。母を振り切るのが容易くなるぐらい、彼は力がついてきているから。
母と比べると細い腕なのに、どこにそんな力が隠されているのやら・・
『大きくなったねー』と言えば『大きくなったねー』とオウム返しされる
ハハハ 母はこれ以上大きくはなりようがないけどね
子供の成長とは嬉しい反面、ちょっと寂しくもある
子供が自分の成長に気づいていなければ、尚更に。
母が年を取り、上手く歩く事が出来なくなったら
エテが母をおんぶして買い物行ってくれるかな
うむ。もう少し筋肉付けないと無理ですな・・・
心の成長
話が出来ず、感情も上手く外に出す事が出来ない重度知的障害児のエテ
重度知的障害者は身体の痛みも心の痛みも感じないのだろうと思っている人達がいる
勝手なものだ
生身の人間が、身体の痛みや心の痛みを感じないなんてある筈がない
驕れる人間達の自分勝手な言い分や行動を見聞きする度にハラワタ煮え返る思いがする
知的障害があっても、当たり前だが心は成長していく
感情として外に出にくい部分はあるが、喜びや悲しみ、辛さや怒り
私達健常者と同じように心も成長し、豊かにもなっていく
知的障害児(者)の心を理解出来ない人間が教師として障害児と関わるべきではない
エテの様に学校を怖がり、そのせいで怪我をし、登校拒否になるという悲劇を生む
残念で悲しい事だ
エテの場合
喜怒哀楽が服を着て歩いてる様な母が常に傍にいる
その母が毎日毎日、喜怒哀楽全開で向かってくる
母に対抗するためにエテの心は急スピードで成長していく
力でも敵わなくなったが
気持ちの面でも完全に君に負けてしまっているよ
母の“敗北宣言”だ
恐るべしエテ
強くなったね